Review of NIKKOR-H Auto 2.8cm F3.5 ニッコールレンズ 「小さな巨人」
ニコンの「ニッコール千夜一夜物語」の 第十二夜 によると、 NIKKOR-H Auto 2.8cm F3.5 は( 1960年3月 発売)「一眼レフレックスカメラがいわば汎用カメラとして認知されるきっかけともなった重要なレンズ」です。 「 ニコン F 」(1959年発売)が発売された当初、広角レンズはなかったからです。「一眼レフカメラは、レンジファインダーでは撮影が困難な望遠撮影や近接撮影用のカメラ」という認識があったそうです。 凸レンズと凹レンズで構成した全体では凹の前群と、凸レンズ、絞り、凹レンズ、凸レンズ、凸レンズの 4 枚のレンズ( 凸凹凸凸 )で構成した通常のレンズのような後群から構成されていて、それ以後発売されたほとんどの広角レンズのベースになっているようです。通称「 レトロフォーカス 」レンズです。 発売時価格は31,000円です。 開発の担当者はその有名な 脇本 善司 氏です。レトロフォーカスの後群の凸凸凹凸を凸凹凸凸に変更したのは大きな特徴だそうです。 NIKKOR-H Auto 2.8cm F3.5 断面図 (参考リンク[1]から借用) 特徴としては、若干暗いではあるが、開放からのかみそりシャープさと、広角レンズのつきものとされる 歪曲収差の少なさ です。 最短撮影距離は60cm です。 周辺光量の低下はあるが、明るい環境ではさほど目立たないです。 Aiではなくて、AFでもないので、デジタル一眼につけると、完全なるマニュアルレンズになります。 D800Eにつけて撮影して見たところ、56年くらい経っても、実力はまったく衰えません!マニュアル操作にさえなれていれば、いくらでもナイスショットを量産できます。むしろ、ご本家のHPにある作品例はあまりその実力を反映できていないように思います。もしかしたらフィルムをスキャンしたものでしょうか。 以下はD800Eで撮影した作品例です。 歪曲収差が少ないことをよく分かるショット 同湾曲収差のテストショット さすがにこれだけ有名なレンズだから、ウェブで検索すると沢山の記事を見つけられます。 感想としては、言われるとおり開放から「 カミソリのような描写 」は50年以上経っても健在です。全体...